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竹波エーイチ

Author:竹波エーイチ
1967年生まれのおっさん。
一つの 「カテゴリ」 で一つの記事となってます(記事は古い順に並んでます)。同世代のおっさん向け。

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マジンガーZとアストロガンガー 〜兜甲児の正義

マジンガーZ対アストロガンガー

ロボットを扱ったヒーローもののパイオニアとも言える『鉄人28号』。そしてその直接の後継である『ジャイアントロボ』。この両作に共通していたことは、いずれも作品中に”アメリカ合衆国”が全く登場せず、しかし最後にして最大の強敵にはアメリカ合衆国のイメージが垣間見えるということだった。
『鉄人28号』においては、それは日本の近海に配備された軍事力という脅威を元に日本政府を威嚇・脅迫するものであり、一方の『ジャイアントロボ』においては「アメリカの核」そのもののイメージが付与されていた。

時代は進み1972年。
仮面ライダー』にはじまる第二次特撮ブームは、その亜流を量産するばかりですでに発展がなく、一部では早くも遠からずの衰退が予感されていた。そんな折に彗星の如く現れて、その後のテレビの歴史を一変してしまう怪物番組が登場する。
ロボットヒーローの中興の祖、言わずとしれた『マジンガーZ』(東映)だ。

当時この『マジンガーZ』のクオリティがどれほど高いものだったかは、わずか2ヶ月だけ先行して始まった『アストロガンガー』(ナック・宣弘社)と見比べれば、その天地ほどの差が誰にでも瞬時に理解できるほどだ。黙って見せられたら、どんな人でも『アストロガンガー』は『マジンガーZ』より最低でも5年は古い作品だと思うだろう。

この二つの作品の絶望的なまでの格差の原因を一言で言えば、「リアリティ」につきる。
『アストロガンガー』を操る(正確には一体化する)主人公は、どうみても7才くらいの子どもで、こんないたいけな幼児が何と宇宙からの侵略軍団と戦ってしまう。ロボットは自分の意思をもっていて日本語で会話をし、およそ頑丈な金属製とは思えない柔らかい動きをし、空を自由自在に飛ぶものの、その推進力は不明だ。

ぼくには『アストロガンガー』を観ていた記憶は全くなかったが、今回(ひどく画質の悪い)DVDを観るにつけ、その理由も今はっきりと分かる。ここまで子どもを舐めた番組では、当の子どもですら観ることはないのだと。
しかもそこへ、わずか2ヶ月遅れで『マジンガーZ』が登場してしまってはもうダメだ。かくしてぼくの記憶から『アストロガンガー』の存在は完全に消去されてしまったのだった。


さて、ではそんな『マジンガーZ』の革命的なリアリティとはいかなるものだったか。
一つには、それがいかにも身長18m、体重が20tもある巨大ロボットとして表現されたことだろう。その操縦は複雑で修練を要し、主人公の兜甲児がいきなり思うがままにロボットを操ることはない。さらにマジンガーZは初めのうちは空も飛べず、海にも潜れなかった。一度コケると容易に立ち上がることさえできなかった。
ぼくらの世代なら、エンディングムービーで解剖図として表されたマジンガーZのかっこよさに痺れなかった者はまずいないだろう。

そして『マジンガーZ』では、なぜ「世界征服を狙う悪の侵略者」が日本ばかりを襲うのか、にも明確な理由付けをした。これも「リアリティ」の一貫だ。日本が美しい国だから・・・ではない。「地下帝国」の総帥ドクターヘルは、日本の富士火山帯洪積世の地層からしか産出されない新元素「ジャパニウム」と、それをもとに精錬された金属「超合金Z」を奪うために、世界でただ一箇所それらの秘密を握っている「光子力研究所」を襲う・・・。

この設定は見事なもんだと思う。
18m、20tもある巨大ロボが、どこに現れるか分からない敵ロボットを探して日本中をウロウロするなんてのは余りに現実性がなく、むしろ迷惑な存在だ。だが、光子力研究所を目標とするドクターヘルは向こうからマジンガーZの懐に飛び込んできてくれるので、こっちはじっくり準備を整えた上で待機していればいい。高校生、兜甲児は連絡があるまでは学校の授業も受けられるので、落第に怯える心配もない。

無論、こうした舞台設定が一種のご都合主義であることは否定しない。
だが肝心なことは、光子力研究所が民間の施設であり、兜甲児も民間人だということだ。民間人が身長18mのロボットで町中を闊歩したら道路交通法違反でしょっ引かれてしまう。だから兜甲児は敵が富士山麓の研究所に迫るまで待っているほかはない。

要するに『マジンガーZ』の物語とは、民間人による自己防衛のための戦いの物語だということだ。

となると、次の兜甲児のセリフには違和感がある。
「俺はDr.ヘルの野望を叩くために、このマジンガーZを正義のために使うことを、今ここに誓う」(第2話)
一見すると、兜甲児という平凡な少年が「正義のヒーロー」に生まれ変わった瞬間、とでもいう意味での、有りがちなセリフのように思えるかもしれないが、実はこのセリフはそんなキザな”男の誓い”のような性質のものではなかった。

第1話でマジンガーZを完成させた兜甲児の祖父が、それを孫に託す際に言ったセリフがある。
「甲児、シロー(※甲児の弟)、あれはお前たちのものだ」
「甲児、お前はあのマジンガーZさえあれば、神にも悪魔にもなれる」
この祖父の言葉に応えるかたちで、甲児は「正義のために」と言ったわけだ。つまりは「神」の方を選んだ。

だがここで注目したいのが、甲児の祖父、兜十蔵博士は、甲児がマジンガーZを使って「悪魔」になることを否定してはいないうえ、それを甲児兄弟の「私物」だと言い切っていることだ。
そして実際のところ、甲児がマジンガーZを使って守っているものは光子力研究所だけに限られている。

つまりは(繰り返しになるが)甲児のいう「正義のために」とは、私物を使って私物を守る”私闘”でしかない。これがかつて一世を風靡して全国の男の子たちを熱狂させた「正義のロボットヒーロー」の物語の本質だ。


・・・これは何とも不思議な話だ。
それではまるで、自分のオモチャを守るためにそのオモチャを使ってガキ大将と戦う子どものストーリーじゃないか・・・。

つづく
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マジンガーZと平和憲法

光子力研究所

前回の記事はかなり慌てて書いてしまったので、もう少しあらすじを整理したい。

まず兜十蔵という博士がいる。
この人は「世界指折りの物理学者で甲児の祖父。富士火山帯洪積世の地層から新元素のジャパニウムを発見し、更にその新元素を使った超合金”Z”を開発、遂にはジャパニウム核分裂の過程で、人類の長年の夢であった光のエネルギー”光子力”を抽出することに成功」(DVD-BOX付録の番組企画書より)

この兜博士の自前の研究所が「光子力研究所」で、当然のことだが富士火山帯に近い山麓にそれはある。太平洋にも比較的近いところを見ると、おそらく静岡県富士市あたりだろう。

そしてドクター・ヘル。
「かつては、ノーベル賞候補者にまでのぼった考古学者だったが、エーゲ海のバードス島に伝わる巨人伝説をたよりに、脅威のロボット文明の遺跡を発見、紀元前の昔、バードス島の人々と文明を持っていた機械獣とも云うべきロボット軍団に新たな生命を吹き込み、その恐るべき力を駆使して、世界制覇を企む」(同)

実は、ドクターヘルを団長とするバードス島調査団のなかには兜博士も加わっていた。そして古代ミケーネ遺跡の発見、ロボット軍団の発掘、ヘルに燃え上がった邪悪な野望・・・といった全てを兜博士は目撃してしまった。ドクターヘルは秘密を知るものの抹殺を図るが、この時ただ一人、島からの脱出に成功したのが他ならぬ兜博士だった。

命からがら帰国した博士は、光子力研究所を弟子の弓弦之助教授に譲り渡すと自分は別荘に引きこもり、そこでマジンガーZの建造に着手する。それは”超合金Z”で身を固め、”光子力”で作動する巨大ロボットで、いわば博士の研究の集大成だった。

やがて「地下帝国」ロボット軍団を完成させたドクターヘルが、手始めに秘密を知る兜博士の殺害を図る。危険を察知した博士は孫の甲児を別荘に呼ぶが、甲児が到着したときにはすでに博士は瀕死の状態だった。博士は甲児にマジンガーZを見せ、
「甲児、シロー(※甲児の弟)、あれはお前たちのものだ」
「甲児、お前はあのマジンガーZさえあれば、神にも悪魔にもなれる」
というと絶命する。

邪魔者を消したドクターヘルは余勢を駆って駿河湾から2体のロボットを上陸させると、手当たり次第の破壊と殺戮を開始した。そこへ、まだおぼつかない足取りで登場したのが我らがマジンガーZだ。甲児の操縦は未熟そのものだったが、マジンガーZの超合金Zはヘルのロボットの攻撃を全く寄せ付けない。そして、光子力エネルギーの発露たるブレストファイヤーで自分のロボットが無惨に溶かされていく姿を見てヘルは確信する。世界制覇のためには、兜博士の開発した超合金Zと光子力の存在は不可欠だと。

こうして、兜博士の遺産を狙って襲いかかるドクターヘルの魔の手から光子力研究所を死守しようとする、兜甲児とマジンガーZの戦いの物語が開始された・・・。


という具合で、簡単にまとめてしまえば『マジンガーZ』とは、日本の富士山にしか存在しない物質をもとに作られた金属とエネルギーの争奪戦の物語だった。だから基本的にはドクターヘルの攻撃目標は、それらを保有する光子力研究所に限られていた。近隣の市街が襲われることもあったが、たいていの場合、それはマジンガーZをおびき寄せるためのワナとして実行された。

となると、ここで湧いてくる疑問がひとつある。
それは、なぜ兜甲児は自らエーゲ海に撃って出てドクターヘルの本拠地を叩こうとしないのか、という点だ。
もちろん、それをやってしまったら放送の契約期間が持たないから、というような下世話な意味でではない。
「正義」を語るヒーロー兜甲児が、その実、光子力研究所に引きこもっていることを正当化する、ぼくらの共通意識とは何なのかという意味でだ。

それを考えるヒントはすでに作品のなかで表されている。
それは兜十蔵博士が設計した時点でのマジンガーZには、水中戦闘能力もなければ、飛行能力すらなかったという事実だ。”無敵のスーパーロボットは”、徒歩か、せいぜい駆け足で敵に向かうしかなかった。
これはどういうことか?

難しい問題ではないだろう。
要するにマジンガーZとは「専守防衛」を旨とするロボットだったということだ。マジンガーZが、海路でも空路でも自由自在に渡海できてしまったら、それは「先制攻撃」であって「専守防衛」にはならない。

となれば、『マジンガーZ』に底流するぼくらの共通意識は明白だろう。
それは憲法第9条、平和憲法だ。

長くなりそうなのでつづく

マジンガーZと市民運動

プロ市民?

前回からの続き

マジンガーZ』(1972年~・東映)のストーリー上の特徴をもう一度整理すると(またかよ!)一つにはそれは、民間人が私物を使って私物を守る”私闘”の物語だった。そしてもう一つ、それは”専守防衛”すなわち敵が攻め込んで来てはじめて開始される戦闘の物語でもあった。

これは実に不思議な話だ。
あれほど大規模な巨大ロボット同士の格闘が展開されていながら『マジンガーZ』からは「国家」や「軍」を臭わせる要素がほとんど排除されている。悪と戦うのはあくまで特定の「個人」であって、ぼくら日本人全てではないってことだ。

一方、悪と戦う”特定の個人”であるはずの兜甲児の側も厳しい制限を受けていた。初期のマジンガーZには水中戦闘能力も飛行能力もなく、海を越えてドクターヘルの本拠地に決戦を挑むことはできなかった。甲児はただひたすらヘルが攻めてくるのを待つしかなかった。

で、こうした『マジンガーZ』の設定の背景には、基本的な武力の否定と専守防衛、すなわち「平和憲法」があるというのが前回までの話。
今回は、そういった時代精神を反対の立場から描いたエピソードを紹介する。反対、つまりぼくら市民の側から見たマジンガーZだ。

まずは第7話「あしゅら男爵の大陰謀」。
上記の制限によって、結果的にマジンガーZの戦闘は光子力研究所と太平洋を結ぶ線上に存在する静岡県の富士市(と思われる)あたりに集中した。その近隣の住民たちの不満がついに爆発した。彼らは暴徒と化すと、光子力研究所の閉鎖を求めて弓教授に詰め寄った。

負傷した教授に代わって「地球防衛査問委員会」とやらに呼び出された甲児は、ここでも「光子力がある限り、Dr.ヘルの挑戦と野望は続く」という理由で研究所の閉鎖を勧告される。
やがて暴徒は甲児の自宅にも押し寄せて「お前はまだ我々を犠牲にしようと言うのか」と騒ぎ立て、ガラスを割るなどの暴行に及んだのだった・・・。


この時の市民の持って行き場のない恨みや怒りは理解できないこともない。確かに近所に光子力研究所があるという理由だけで、彼らだけがいつも被害に遭うのは理不尽なことだし、不公平でもある。そして彼らが「犠牲」という通り、彼らはマジンガーZの戦闘が実は”私闘”であることをハッキリと実感していたのだろう。

しかしそんな市民はともかく「地球防衛査問委員会」のほうには問題がある。
仮にも「地球」を「防衛」するために存在する彼らの主張を要約すれば、ドクターヘルに光子力技術を渡してしまえ、ということだ。そうすれば富士市の壊滅は防げるのだ、と。

これは笑い話ではなく、同じようなことを現実に主張する人たちがいるんだから驚く。
無防備全国ネット - wikipedia

さらには第17話「地底機械獣 ホルゾン3」。
この回、ドクターヘルはロボットを使って、光子力研究所以外の地域に人工地震を起こす。もちろん東京も大地震に見舞われてしまう。そして地震を止めたければ、ドクターヘルを光子力研究所の所長に据え、ジャパニウムを引き渡せと言い出した。この続きは簡単に想像がつくだろう。都民はデモ隊を組んで国会議事堂を取り囲むと、Dr.ヘルの要求に従えと騒ぎだしたのだった。


こうして見ると、ぼくら日本国民にとっては、ドクターヘルと戦い抜こうとする甲児たちの行動はむしろ迷惑なものであり、余計なおせっかいであり、無関係な出来事であるように思えてくる。
無論、そういった感覚の根底には、平和憲法があると見ていいだろう。ぼくらに刷り込まれた平和憲法の精神が、マジンガーZを制限し、今後はそれを排除しようとする。

似たようなストーリーは、ほぼ年代を同じくする『ウルトラマンA』でも見ることができる。
第26話「全滅!ウルトラ5兄弟」、第27話「奇跡!ウルトラの父」
侵略宇宙人ヒッポリト星人は、ウルトラマンAを引き渡せば東京への攻撃を中止する、と通達してきた。これを聞いた市民は防衛隊TACのクルマを取り囲むと、星人の要求に従え、と口々に要求するのだった・・・。


ここで結論めいたことを言ってしまうなら、1970年代のヒーロー番組にはしばしばこういった、戦うべきか降伏すべきかを問題提起とするストーリーが散見できる。それは、高度経済成長がようやく一段落し、日々の暮らしに困らなくなった日本人がふいに我に返った時代だったのかもしれない。

とりわけ、戦闘描写を避けられないヒーロー番組の作り手たちにとって、それは自問自答の日々であってもおかしくはないだろう。なかでも『マジンガーZ』において興味深いのは、戦うか降伏するかの焦点となっているものが、他でもない、我が国が誇る世界に比類ない技術力だという点だ。ここには戦後、営々と築き上げてきた日本人のプライドの象徴がある。

民族としてのプライドをとるか。それとも誇りなき平和な日常をとるのか。
1970年代とは、まだそういった骨太な選択を多くの日本人が考えているような、そんな時代だったのだろう。

さて、話を戻すと、マジンガーZと平和憲法のかかわりについては、また別の角度からも見ることができる。
平和憲法を日本人に与えた張本人、アメリカの登場だ。

つづく

マジンガーZとアメリカ

ジェットスクランダー

マジンガーZ』(1972年~・東映)の悪役、ドクターヘルが企むものは、彼が作ったロボット軍団による「世界征服」だった。ところが、ヘルの作ったロボットはマジンガーZの装甲(超合金Z)を破ることができず、そのエネルギー(光子力)の前には無力な存在だった。そこでヘルは「世界征服」の前に、まずそれら日本の光子力研究所でしか保有しない技術の強奪を考えて、執拗な攻撃を仕掛けてくるのだった・・・。

このドクターヘルの「地下帝国」vs「光子力研究所」という抗争の構図が、実のところ”私闘”であることはすでに書いた。ではそんな”私闘”をなぜ兜甲児が「正義のために」と言えるのかといえば、それは甲児が光子力研究所を中心にした、同心円的な世界平和を考えていたからだ、ということになるだろう。

超合金Zと光子力エネルギーを死守する限り、マジンガーZさえあれば差し当たりのヘルの脅威は防ぐことができる。逆に言えば、それらがヘルの手に渡ったとき、世界はヘルの独裁するところとなる・・・。
これが甲児のいう「正義のために」だ。

となれば、光子力研究所が敗れたならまずは近隣の静岡県がヘルの手に落ち、そこから日本全土、中国、ロシア、インド・・・という順に世界中がヘルに屈していく理屈になる。
もちろんその中には、太平洋を東に隔てたアメリカも含まれるだろう。

ところが『マジンガーZ』に登場するアメリカ人には、どうやらそんな危機意識は全くないらしい。

まず第18話「海のギャング 海賊グロッサム!」
この回、ついにマジンガーZに水中戦闘能力が搭載された。この改造に立ち会い、助言を行ったのはゴードン博士。
彼は、”太平洋を飛行機で横断して”やってきた科学者で、「オズモ計画」で「宇宙ロケットを打ち上げた」功績をもつ人物だ。誰がどう見ても彼は”アメリカ人”だ。

すでに書いたように「平和憲法」による制限を受けるマジンガーZには、当初水中戦闘能力は装備されていなかった。マジンガーZが自力で海を渡ってしまっては先制攻撃が可能になってしまい、憲法9条に違反する。
しかしその水中戦闘能力を、憲法9条を日本人に与えたアメリカ人の手で装備したことにすればどうだろう?
問題が解決するわけではないが、世間の風当たりは弱くなるはずだ。

これはぼくの妄想でもコジツケでもない。
もう一つの弱点、飛行能力もマジンガーZはアメリカ人の協力で得ることができたからだ。

第33話「大空襲! バラスKは空の無法者」
マジンガーZの弱点を突くべく空からの攻撃が続く現状に業を煮やした弓教授は、ついにアメリカへ飛んだ。ロケット工学の権威、スミス博士に会うためだ。ニューヨークで弓教授と面会したスミス博士は「われわれは彼を倒すためには、どんな援助も惜しみませんよ」と快く改造計画書に目を通していくのだった・・・。

こうして二人の高名なアメリカ人科学者の協力によって、”成長するロボット”マジンガーZは、いよいよ陸海空を自由に活動できるロボットへと進化していった。「平和憲法」違反は、アメリカ人の”お墨付き”悪く言えば”許可”を頂くことで克服できたのだった。

めでたしめでたしと言いたいところだが、ここで注目したいのがスミス博士の発言だ。
「どんな援助も惜しみませんよ」

もしも甲児が考える同心円的な世界平和の維持をスミス博士が共有していたなら、「援助」なんてぬるいセリフは出てこないはずだ。彼もまた日本に同行し、光子力研究所の一員としてマジンガーZの強化に当たるべきだ。
しかし彼はそれをせず、あくまで「援助」することにとどまった。
これはどういうことか?

つまるところ、アメリカ人のスミス博士やゴードン博士にとって、ドクターヘルとの戦闘は「他人事」だということだ。この戦闘にアメリカは無関係なのだ。
そして実を言えば、2年に渡ってドクターヘルと戦い続けた兜甲児自身、同じように感じていたフシがある。

最終回第92話「デスマッチ!! 蘇れ我らのマジンガーZ」
甲児と仲間たちはついにDr.ヘルを破り、光子力研究所ではお祝いのパーティーを楽しんでいた。しかし今度は「ミケーネ帝国」による新たなる侵略が始まってしまう。甲児はマジンガーZで出撃するが、ミケーネ帝国のロボットには光子力はまったくの無力で、鉄壁と思っていた超合金Zも易々と破壊されてしまった。光子力研究所も今度ばかりは陥落し、完全に機能を停止してしまう。暴れ回る敵ロボット。するとそこに科学要塞研究所からグレートマジンガーがやってきて、あっさりとミケーネ帝国のロボットを倒してしまう。マジンガーZを失った甲児は、心と体の傷を癒すため、弓教授の勧めでアメリカに留学する・・・。

新たな侵略が始まったのにも関わらず、マジンガーZが敗れるや否や、甲児はあっさりとアメリカに留学してしまった。心と体の傷を癒すためにだ。
つまり『マジンガーZ』の登場人物たちにとって、アメリカは「安全地帯」だということだ。ドクターヘルは「世界征服」というが、それはウソだ。ヘルの言う「世界」には、最初からアメリカは含まれていない。

ならば『マジンガーZ』とは一体どういった物語だったのか?
それは、戦後日本の象徴ともいえるハイテクノロジーを、ヘルと光子力研究所が奪い合うというものだった。そして光子力研究所は戦後の「平和憲法」による制限を受ける存在で、アメリカとは極めて親密な関係をもつ存在でもあった。
要するに、光子力研究所には「戦後日本」のにおいがプンプンするというわけだ。

では一方のドクターヘル「地下帝国」は何だろう?
そもそもヘルはノーベル賞候補にあがるような高名な学者だった。アカデミズムの中心にいる人物だったということだ。ところがヘルはにわかに「世界征服」の野望を持つと世界秩序の外部に飛び出していき、独自のテクノロジーをもって侵略戦争を開始した・・・。

ぼくにはこのヘルの一連の行動には日本の戦前、すなわち大日本帝国のイメージが重ねられている気がするが、それを語るには『マジンガーZ』だけでは材料が足りない。今はとりあえずの推論として『マジンガーZ』とは、日本の戦前と戦後が精神的な「内戦」をしている物語ではないか、とだけ言っておくこととする。要するに「侵略者」vs「平和憲法」ということだ。

詳しくはまたいずれ「ガンダム編」にて。

つづく

9条どうでしょう

9条どうでしょう

このブログは、元々はぼくのごく親しい友人たちに向けて書いているもので、言わば場末の居酒屋でおっさんたちが顔つきあわせ、昔のテレビを懐かしみつつ無駄な深読みをしてはニヤニヤしている不気味な光景・・・そのまんまのものだ。
もしも現実にそんな光景に出くわしてしまったなら、ぼくなら出来るだけ離れた席に移るか、まだ残っているツマミに未練を残しつつもそっと店を出るかするだろう。

ところが困ったことに、ここはインターネットの世界なので、何の罪もない若い人がウッカリと迷い込んで来てしまう可能性が過分にある。しかもその人は大変な向学心の持ち主で、文字がズラズラ並んでいると何でも一応は読んでしまう生真面目な人である危険性もある。するとここに悲劇が起こり、ブログ主がしたり顔で一般論のようにまくしたてる言葉の指す内容が、彼にはサッパリ理解できないという事態が起こりうる・・・。

つまりは「アメリカ」だの「平和憲法」だのと言われても、それぞれが属する世代によって持っているイメージが違うんじゃないか、ということだ。例えば「アメリカ」だが、ぼくらの世代なら1980年代に日米貿易摩擦に敗北したアメリカが逆上して、日本車を壊したり燃やしたりする有り様をテレビでみた(ジャパンバッシング)。

それはごく短期間の祭りではあったが(しかもバブルの崩壊で何十倍にも割増して報復されてしまったが)、思春期にアメリカの敗北を目にしたぼくらは、上の世代のように何が何でもアメリカ様という感覚は薄いと思う。そしておそらくぼくらより若い人には若い人なりの、アメリカ観があるだろう。

だがこのブログで問題にしているのは、1970年代を中心にした20年くらいの期間に作られたヒーロー番組についてだ。その頃のぼくら世代は鼻水たらしたクソガキで、テレビはただただ観る側にいた。番組を作っていたのは主に昭和ヒトケタから焼け跡世代の人々で、彼らこそが戦後の日本を作った人たちでもあった。
なのでこのブログにおける「アメリカ」やら「平和憲法」やらは、彼らの世代の感覚で語られなければならない。

ということで前置きが長くなったが、このブログで扱っている「アメリカ」やら「平和憲法」やらについて、ここで改めてザッとまとめておくことにする。
参考書は内田樹という先生の書いた『9条どうでしょう』(2006年・毎日新聞社)。内田樹さんは1950年生まれとのことなので、焼け跡世代より若い団塊世代あたりに属する人だが、下の者のほうが上がよく見えることは多々あるので構わないだろう。

本の中でまず内田さんは、日本国内では矛盾した存在と見なされる「平和憲法」と「自衛隊」は、アメリカ側から見ればまったく矛盾しないことを指摘する。つまり”アメリカの利益のために日本は戦争をするな”という命令と、”アメリカの利益のために日本も多少の軍備はせよ”は、アメリカにすれば純粋に自分の利益を押しつけていった結果にすぎない。

しかし押しつけられた側の日本からすれば、この矛盾をそのまま受け入れてしまうと(内田さんのいう)「奴僕国家」であることさえも受け入れてしまうことになる。
そこで日本人はこの矛盾を、我が国の”国内問題”であると考えることにした。護憲派と改憲派に自ら分裂し、自ら対立し、解決不能の国内問題だと思い込むことで「奴僕国家」という外交問題から目をそらし、それを心の奥深くに隠蔽しようとした・・・。

以上、テキトーな要約だが、もっと正確に知りたい方は、内田さんご本人のブログなどを参照してください。
内田樹の研究室


さて、これで共通の認識ができたところでヒーロー番組の話題に戻るなら、ヒーロー番組にはしばしば上述した日本の「矛盾」が表出してしまっていることは、今や十分理解されることと思う。
鉄人28号』や『ジャイアントロボ』では何故「アメリカ」が忌み言葉、タブー視されているのか?
マジンガーZ』は何故、改造のたびにいちいちアメリカ人に”お許し”を得なくてはならないのか?

ヒーロー、特に巨大ロボはまさに「軍事力」に他ならず、それは鉄人28号を設計したのが旧日本陸軍であったことからも明らかなことだ。そして日本人がそんな軍事力を手にしたとき必然的にぶち当たる壁が、この国が「奴僕国家」であるという現実だろう。ドレイのくせに、アメリカにもない兵器を持つことが出来るのかと。

だからその問題をクリアするため『鉄人28号』はアメリカの存在自体を無視する以外なかったし、『マジンガーZ』はその国外使用の可能性をアメリカ様に許可してもらうしかなかった。単独の記事にはしなかったが『ゲッターロボ』ではアメリカ製の巨大ロボとゲッターロボが共同して敵に当たるストーリーもある。

内田さんは本の中で、「奴僕国家」の現実を国内問題にすりかえて先送りしてきた日本人を「可憐」だと言う。
だったら『鉄人28号』も『マジンガーZ』も同じく「可憐」なのだろう。
昭和ヒトケタや焼け跡世代が作る物語は、日本人の哀しいまでの「可憐」さを背負った物語だったということだ。


だがここに、一見すると日本人の「可憐」さを最前面に押し出しているように思わせながら、その実「奴僕国家」である現実の方を強烈にぼくらに刷り込んでしまうような作品がある。そしてそれは、他でもない内田樹さんらの世代、すなわち団塊世代近辺の人たちに強い影響を及ぼした作品でもあった。

巨人の星』だ。

つづく

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