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竹波エーイチ

Author:竹波エーイチ
1967年生まれのおっさん。
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巨人の星 一徹と春江

春江さん

巨人の星』には、マンガ版の他に日本テレビ系で放映されたアニメ版があることはご存じの通り。このテレビ版は全182話という大変な分量を誇っていて、当然ながらただの原作の動画版にはとどまらない。原作の行間を補うようなエピソードがふんだんに盛り込まれ、原作ではハッキリしなかった事実がいろいろと理解できるように構成されている。

梶原一騎伝』(斎藤貴男)などを読む限り、梶原一騎という人は自分の原作の一字一句まで修正されることを嫌がっていたそうだ(ちばてつや除く)。ならばアニメ版『巨人の星』も、梶原一騎の意向を無視して勝手な解釈を付け加えていることはないと見て問題ないだろう。

と考えたとき、実は『巨人の星』には大いなる誤解が通説としてまかり通っている現実に気がつく。
それは主人公、星飛雄馬の父である星一徹が、自分をクビにした巨人軍への「恨み」から息子を巨人のエースに仕立て上げ、巨人軍を見返してやろうとした、という通説だ。

例えば荒俣宏さんだが、『荒俣宏の少年マガジン大博覧会』のなかで以下のようなキャプションをつけている。

[巨人の星]のほんとうの主人公は星一徹である。スポーツに遺恨はない、といわれてきたが、ドッコイ、[巨人の星]は遺恨相撲の野球版といえる。星一徹があれほど鬼のようだったのは、かれは川上哲治に象徴されるスポーツマンシップに復讐するためだった。


星一徹が巨人軍に入団したのは戦時中だった。一徹は球史始まって以来の天才三塁手として期待されたが徴兵され、不運にも戦地で肩を壊した。一徹はその不利を補うため、送球をランナーにぶつけると見せながら急変化で一塁に送る「魔送球」をあみ出して巨人軍に復帰する。しかし川上哲治に、「魔送球」は巨人軍の栄光と名誉に反する行為だと叱責され、自ら巨人軍を退団する・・・。

こうした経緯を見れば、星一徹が巨人軍に何らかの遺恨を抱いていたとしても不思議ではなく、その遺恨を息子に託してはらそうとしてもまた不思議ではない。
だが、一徹の名誉のために断言するが、それは真実ではない。飛雄馬に野球をやらせたがったのは、実は一徹の亡き妻、春江さんだった。

第33話「甲子園へのVサイン」。
苦闘の末、エース星飛雄馬を擁する青雲高校は晴れて甲子園への出場を勝ち取った。しかし、ボロ家に帰宅して亡き母の御前に佇む飛雄馬は複雑な表情だ。
「母ちゃんにとって、野球は仇みたいなもんだ。母ちゃんの幸せを奪ったにくい相手じゃないか・・・」
それを聞いた一徹は、これまで隠していた春江さんの思い出ばなしを飛雄馬に語る。

(ここから回想シーン)
ある日、建設現場で働く一徹が帰宅すると、まだ幼児だった飛雄馬がなにやら下手くそな絵を描いている。それは「やきゅう」しかも「まきゅう」の絵だった。一徹は血相を変えて飛雄馬から絵を取り上げると、それをビリビリに破り捨てる。
「この上お前までが野球に憑かれては、あまりにも可哀想じゃないか、母さんが・・・。お前がユニフォームを着るようなことがあったら、それこそ母さんは心底野球を憎むだろう・・・」

その直後だった、ふいに春江さんの病状が悪化したのは。一徹は明子を医院に走らせると、自分は必死に妻を支えようとする。しかし春江さんはすでに死期を悟ったか、布団の下から小さく折りたたまれた洋服を出すと一徹に手渡す。広げてみるとそれは子供用の野球のユニフォームだった。胸にはもちろん「G・I・A・N・T・S」の文字。

「飛雄馬に着せてやったらきっと喜ぶと思って・・・」
「そ、それじゃお前は、飛雄馬に俺と同じ野球の道を歩ませることに・・・!」
「できますね、お父さん・・・」
「う、うむ」
「・・・飛雄馬を立派な巨人軍の選手に叩き上げることです」
「で、できるとも!」
「お父さんが魔送球のために巨人軍を追われた時に、飛雄馬の運命は決まっていたのですよ。お父さんがやろうとしてやれなかった道・・・そこから飛雄馬を遠ざけたら、あの子の人生はみじめになりますよ。わかりますね」
「わかる・・・わかるとも!」
「どんなに苦しい修行にも、あの子はきっと耐えるでしょう。だってあの子の体には、星一徹の血が流れているんですもの・・・」
「うむ、うむ・・・春江」
「神さま、野球をすることしか知らない無器用な父と子が、新しい出発をいたします。どうか二人をお守りください・・・」

そういうと春江さんは絶命する。
一徹は夜空にひときわ強く美しく輝く星に春江がいると信じ、その星にわが子飛雄馬の未来を誓った。そして「母さんの星」はやがて「巨人の星」に、その名前を変えていったのだった・・・。


一徹が巨人軍への執拗な遺恨や復讐心を持っていなかったことは、他のエピソードからも見ることができる。
第6話「超人ランナー」。
この回は、一徹と同じ時期にその殺人的な走塁でやはり球界を追われ、今はハワイで大農園を経営している男が帰国してくる話。男は自分の息子に殺人スチールを仕込んでいて、飛雄馬と組ませてやがては球界を牛耳ろうと持ちかける。それを聞いた一徹の返答はこうだ。
「目的がちがう」

あるいは第8話「もえろライバル」。
貧困のため高校進学が危うい飛雄馬。しかも受験を控えた大切な時期に、一徹が事故で入院してしまう。これを知って駆けつけてきたのが川上哲治だ。川上は一徹の実力を惜しみ、巨人軍のコーチに就任するよう申し出る。飛雄馬一人で手一杯と一度は断った一徹だったが、背に腹はかえられず結局は承諾する(すぐ後に辞退する)。

てな具合で、星一徹という男がちっぽけな巨人軍への「遺恨」や「復讐心」だけで飛雄馬にスパルタ訓練を強いたわけではないことは確かなことだ。「巨人の星」は「母さんの星」であり、一徹は妻の春江さんの願いを実行していたに過ぎない。
しかし春江さんの本当の願いが、飛雄馬ではなく一徹を「みじめ」にさせないための野球だったところは泣かせるところだ。ある意味では、飛雄馬は一徹復活のダシに使われたようなものだろう。

つづく

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