プロフィール

竹波エーイチ

Author:竹波エーイチ
1967年生まれのおっさん。
一つの 「カテゴリ」 で一つの記事となってます(記事は古い順に並んでます)。同世代のおっさん向け。

カテゴリ
もくじ

全ての記事タイトルを表示する

ブログ内検索
月別アーカイブ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

主要記事
リンク
応援中
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

フリーエリア
趣味 - シュミラン

モスラ対ゴジラ その2

モスラ対ゴジラ

1959年の伊勢湾台風はwikipediaによると、はじめ南太平洋のエニウェトック島付近で発生し、サイパンを経由したのち南近畿に上陸したそうだ。モスラのタマゴもそういった流れに押されて、「静の浦海岸」に漂着したのだろう。タマゴは地元の漁師の手から悪徳興行師・熊沢に売却され、レジャーランドの目玉として展示されることになった。

そこへインファント島からモスラに乗って「小美人」がやってきて熊沢にタマゴの返還を要求するが、熊沢は相手にしない。小美人はこのときの交渉に協力的だった新聞記者の酒井と三浦博士に礼を言うと、インファント島へ帰っていった。

ほどなく倉田浜で目覚めたゴジラが名古屋を襲い、なお東進を始めた。酒井と三浦博士はインファント島に出向き、モスラの支援を懇願するが、島民も小美人も「島民以外は信用できない」と言って、はじめはそれを拒否する。しかし酒井らの熱意にうたれ、モスラは出撃する。

静の浦海岸に到着したゴジラはモスラのタマゴへの攻撃を始めるが、すぐに飛来したモスラとの戦闘が開始される。優勢だったモスラだが、ここで寿命が尽きてしまい、タマゴをかばうような体勢で死亡する。
ゴジラはなお東進し、やがて海に入ると岩島に向かう。小美人が祈りの歌を歌い、モスラのタマゴは孵化、双子の幼虫が誕生する。幼虫はゴジラを追って岩島に上陸すると、絹糸を吐いてゴジラの動きを封じ込める。ゴジラは今回も海に転落し、浮かび上がってはこなかった。双子の新モスラは小美人とともに、インファント島へ帰っていくのだった・・・。


以上は『モスラ対ゴジラ』の、モスラ側のストーリーだ。ここには以後のゴジラシリーズ、特に今回問題にしている「ゴジラじしんの意味」に繋がる重要な転換点がふたつあると思う。

まずその一点は、なぜモスラはゴジラに蹂躙される日本に「力を貸す」ことを決断したのかということだ。
モスラの出動を懇願する酒井記者と三浦博士に、水爆実験の影響で草木も生えぬ大地にされてしまったインファント島の長老は言う。

「悪魔の火ぃ焚いたのは誰だ! 神も許さぬ火ぃ焚いたのは誰だ!」
「我々、この島以外の人間、信じない!」
この長老の発言に、水爆実験をしたのはアメリカだと反論するのは間違っている。長老はさらに言う。
「モスラのタマゴ、返さない!」

長老の怒りは、聖なるタマゴを見世物にしようとしている日本人にも向けられている。もちろん、心優しい小美人でさえ「あなたがたの世界を信用できないのです」と言う。

この島民の心を変えたのは、酒井記者の演説だった。
「我々だって、人間不信のない世の中は理想なんです。でも人間が多ければ、どうしても難しい問題が起きてくるんです。しかし我々は諦めません。その理想を実現するために努力していきます。どうか、長い目で見てください」

日本人の酒井が言ったことで、あたかもこのセリフは、モスラのタマゴをレジャーランドの展示物にしようとする熊沢に代表される、拝金主義の日本人について語っているように見える。
しかし、その真意は違うところにあるとぼくは見る。

酒井の言う「難しい問題」とは何か?
一度はタマゴの返還を求めて来日した小美人とモスラがあっさりと引き下がった理由は、水爆実験にも耐えるモスラのタマゴが、人間の力程度では破損することはできないことが分かっているからだ。彼女たちが心配したのは孵化後のモスラが周囲の日本人に迷惑をかけることであって、タマゴの安全についてではない。
だから心ない日本人がタマゴを見世物にしても、被害にあうのは当の日本人のほうで、それは自業自得というものだと島民は思うだろう。


という具合に「モスラのタマゴ、返さない!」の方は、実はそれほどの大事ではない。
問題なのは、インファント島を草木も生えない「受難の島」にしてしまった「悪魔の火」のほうだ。言うまでもなくそれは水爆のことだが、水爆実験を行ったのは日本人ではなく、アメリカ人だ。当事者でもない日本人が、インファント島島民に誓う「努力」とは何か?

つまりここで酒井が誓っていることとは、アメリカ合衆国の水爆実験をいつの日か日本人の努力でやめさせる、という意味だ。だから酒井はやや曖昧ぎみに「難しい問題」と言ったのだと思う。

そしてその酒井の宣言の直後に、モスラは反応する。このモスラはかつてニューヨーク(劇中ではニューカーク)を襲撃した、あのモスラだ。このモスラには「善悪は分からない」。モスラを動かすものは、インファント島島民の心だ。そしてモスラと島民を繋ぐ存在が巫女である「小美人」だ。

だから小美人が「モスラは力をお貸しします」と言う時、それはインファント島島民が、日本人のためにモスラの力を貸すと決めたということだ。
アメリカの水爆実験によって引き裂かれた日本と南洋が、ここにようやく心を一つにした。
だからこそ、モスラはやってくる。


転換点のふたつ目。
それは、今作で誕生した双子の新モスラは、日本で生まれたモスラだということだ。
前作『キングコング対ゴジラ』の劇中で、動物学者の重沢博士は言った。
「戻ってくると言ったほうがいいかな。動物がみな持っている帰巣本能。つまり生まれた巣は忘れないっていう本能だよ」

双子の新モスラはゴジラを倒したあと、小美人を乗せてインファント島へ泳いでいった。しかし、彼ら(彼女たち?)の誕生の地は、この日本だ。新たなるインファント島の守護神の帰巣本能は、「生まれた巣」である日本に向けられなくてはならない。
こうして新モスラは、南洋と日本にまたがる守護神となった。南洋と日本が、同じ「神」を共有することになった。


それにしても、1962年に復活したゴジラは、どこに行こうとしているのか。
ぼくには先の、水爆の被害者インファント島に向けられた酒井の誓いは、実はゴジラにも向けられていたように思える。戦後20年が過ぎても、なおあの戦争のメタファーとして現れ、「水爆そのもの」となって放射能をまき散らす「荒ぶる神」ゴジラ。酒井はゴジラが誕生してしまった南洋の地で、日本人を代表して、この癒されぬゴジラの魂を鎮めるための宣言をしたようにぼくには思える。

「しかし我々は諦めません。その理想を実現するために努力していきます。どうか、長い目で見てください」

果たして酒井の誓いは、さまよえるゴジラの魂に届いたのだろうか。
そして、ゴジラは「ゴジラじしんの意味」を、取り戻すことができるのだろうか。

つづく

関連記事:モスラ モスラ対ゴジラその1