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竹波エーイチ

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聯合艦隊司令長官『山本五十六の大罪』

山本五十六

ぼくの知る限りでは、今のところ史上最後の反日反戦映画は『きけ、わだつみの声 Last Friends』(1995年 東映)だ。そのラスト近く、懲役拒否で逃走したものの憲兵隊に捕まって拷問を受けた青年、鶴谷(緒形直人)は叫ぶ。
誰がこんな戦争を始めたんだ! 誰が俺たちの仲間を戦場へ連れて行ったんだ!!

鶴谷の第一の疑問については、どうも近衛文麿米内光政が怪しい・・・というのが前回までの話。では第2の方はと言えば、それは山本五十六だ、というのが中川説だ。

 山本五十六とは、決して戦場に出撃しない、現場指揮はとらない、安全圏にいて自分の命を惜しむ、”卑怯”の二文字を絵に描いた、史上最低の高級軍人だった。(『山本五十六の大罪中川八洋 弓立社)


なるほど、日本の歴史で名将と言われる人物は、源義経にしろ織田信長にしろ東郷平八郎にしろ、みな最前線で指揮をとったもんだ。しかし山本五十六は、ミッドウェイ海戦で「空母四隻の前方2㎞にいるべき山本の大和が、あろうことか、この空母四隻よりはるか後方540kmに逃亡=職場放棄していた」。

やってみせ、言ってきかせて、させてみて、 誉めてやらねば人は動かじ
は山本の名言だそうだが、言ってることとやってることが違うのではないか?

 ミッドウェー海戦の敗因は、山本五十六を庇うために奥宮正武らが考案した、弁解用の創り話「魔の五分間」などでは、もちろんない。最大の主因は、軍人にあるまじきレベルの、”山本五十六の怯懦”(臆病)にある。
(中略)
 ”山本五十六の怯懦”とは、山本が命を惜しんで、戦艦「大和」の通信傍受隊が敵空母の位置を一日以上も前にキャッチしているのに、それを南雲提督が率いる機動部隊に知らせなかった事件である。”無線封鎖”を解けば、自分が乗艦している「大和」の位置を敵に知られて攻撃される可能性があると、山本は、自分の命大事と戦々恐々して、それを避けたのである。(同)


ぼくは昔、光栄の『提督の決断Ⅲ』という歴史シミュレーションゲームにハマったことがあるが、日本海軍で「ミッドウェー海戦」に勝つのは難しい作業ではなかった。要は、後方の主力部隊を全力で前進させ、機動部隊の援護に回せばいいだけ。そうすれば我が軍は空母8(米軍は3)戦艦11(米ゼロ)巡洋艦28(米8)という圧倒的な戦力差になって、負けるわけがない。

だがもちろん、ヘボな用兵で虎の子の主力空母4隻を失ったことだけで、山本五十六に「大罪」があるというのは酷だろう。問題になるのは、ミッドウェーの大敗北が「隠蔽」されたことだ。

ミッドウェー海戦の大敗北が国民に知れるのを恐れた山本五十六は、このとき生き残った最後の第一級の海軍パイロットたちを休養のための下艦すらさせることなく次から次へと新しい戦場に送り戦死させ口封じをすることを計画し、それを実行した。このミッドウェー海戦の敗北を政府全体が知っていたら早期講和が決断された可能性もあり、「山本五十六の犯罪」の害は量り知れない。
(『近衛文麿の戦争責任』)

この海軍の嘘情報で、日本は戦争全体の合理的・有効な作戦立案そのものが不可能になったのに、海軍がそれを気にした様子はない。
(『山本五十六の大罪』)


2011年に公開された映画『聯合艦隊司令長官 山本五十六 -太平洋戦争70年目の真実-』(東映)をみて、日本語を解する欧米人なら大半の人が驚くであろう点は、ミッドウェイであれだけの大敗をした人物が何の責任も問われずに、引き続き同じポストに留まっていることだろう。ぼくらはごく最近、「誰も責任を取らない人たち」として、民主党政権や東京電力といった組織を目の当たりにしたもんだが、その日本の伝統は、すでに日本海軍から始まっていたようだ。

もしもこのとき山本が引責辞任すれば、「なぜ?」の声からやがては海軍の大敗北が明るみに出たはずだ。そうすれば、早晩訪れる戦力の大逆転が問題になり、「早期講和」という(本来)山本が願った方向へと舵が切られた可能性は高い。
ならば「学徒出陣」や「東京大空襲」や「ひめゆり」や「原爆」や、その後の日本を襲ったありとあらゆる悲劇のスタートは、このミッドウェイ敗戦の「隠蔽」にあったことになる。「敗北」自体ではなく、その「隠蔽」にだ。

 米内ら海軍が、昭和天皇に残存艦艇の実数を初めてほぼ正しく報告したのは、1945年4月、沖縄戦に戦艦「大和」が特攻出撃する直前であった。
(『山本五十六の大罪』)


・・・映画だと、役所広司がいかにも理想の上司っぽく演じてるが、実際の五十六さんは、そんなに良い人でもないらしい。ミッドウェイの敗戦の後、五十六さんが考えたのが「特殊潜行艇」1000隻による攻撃だったらしいが、呉工廠の朝熊水雷部長が「本体はともかく1年半では魚雷と発射管が間に合わない」と答えると、あっさり「頭部爆装でよい」と言ったそうな。
つまりは、若者2000人の命を武器にした「特攻作戦」だ。

自分の知らない命に対する想像力の欠如・・・。
これまた先の原発事故で散々見せられた日本人の一側面だが、その手の人に偉くなられるのはマジで国民の不幸だ。いや、別に枝野や菅直人のことを指してるわけじゃないんだが・・・。

つづく


【2015年4月20日追記】
この記事で取り上げた「中川本」に対して、K・Iさんという方から批判のメールを頂いたので、全文を掲載する。

中川八洋氏のその本は私も知っています。残念ながら、殆どデタラメか何の根拠もない与太話の掻き集めです。中川は意図的にか、どうか知りませんが、何の検証もせずに掲載して、批判のネタの材料にしてるだけです。
隠蔽は大本営(軍令部)と海軍省が行なったものです。海戦直後にもう隠蔽の処置を指示しています。連合艦隊からは正確な数字を報告しています。また、特攻兵器の件も中川本は事実ではありません。これは「海軍省の山本某という課長が人間魚雷の試作を3基作れ」といったのを、又聞きした誰かが「山本長官が千基作れ」と言ったと勘違いしてふれ回ったもの。また、山本長官はひそかに海軍大臣に辞任を申し出ていたが、他に適任者がない、という理由で却下されています。
はっきり言いますが、中川氏のこの本は殆どウソというべきものです。
ひどいものです。


おそらくK・Iさんの指摘は事実なのだろう。確かに中川本は山本五十六憎しの思いが強すぎるように感じる。だがそれでも、山本五十六が敗北の責任を取ってない(辞任してない)のも事実だし、特攻を容認していたことも事実だ。「山本五十六は映画の主役を張れるほどのヒーローだったのか?」というぼくの疑念は、いまも氷解していない。

例えば、経済評論家の上念司さんは、真珠湾攻撃を「愚策」といい、山本五十六を「無能」という。

 それは「フィリピン沖で日米決戦」という日本海軍が何十年もシミュレーションして準備してきた必勝プランを捨てる無謀なギャンブルでした。多くの参謀に反対されたにもかかわらず、山本が辞任をチラつかせて無理やり強行した愚策です。
 (中略)アメリカ艦船が大量に沈めば、戦死者が数千人単位で出てくることになります。
 当時の日本海軍の砲弾命中率は「アメリカ海軍の3倍」と言われています。(中略)最悪引き分けたとしても、大量の戦死者が出ればアメリカ国内で一気に厭戦ムードが広まります。
 しかもフィリピンは植民地でありアメリカの領土ですらありません。
 (中略)ところが、無能な山本五十六はわざわざ真珠湾まで出かけて行って、占領もせず帰ってきました。しかも、日本海軍の手のうちを全部見せて「航空作戦」の重要性をアメリカにわざわざ教え、アメリカ人のやる気にまで火をつけてしまいました。(『経済で読み解く大東亜戦争』2015年/KKベストセラーズ)



また、保守論客の重鎮として知られる日下公人さんは、山本五十六が指揮した昭和17年10月のガダルカナル島艦砲射撃を、「スタンドプレー」「やったふり」と評している。要するに、陸軍に対して海軍のメンツを保つだけのために、膨大な砲弾を無駄に撃ち込んだ愚策。「山本五十六は本気で戦争していない。陸軍と戦争している」と日下さんは言う。

 そこで山本五十六は、もう一回やれという指令を出す。彼は効果がないことを知っている。部下も大反対している。それでも中止にはしない。天皇陛下のところに第二回をやりますと報告すると、同じことを二度して大丈夫かと聞かれるが、大丈夫ですと答えるところは無責任である。
 はたして大丈夫ではなく、敵は待ち構えているから、たちまち発見されて戦艦が一隻沈んでしまった。行かされた戦艦の乗組員の身になってみろと言いたい。山本のスタンドプレーのために出されて戦死したのである。ところが、そういうことを海軍の軍人はいまだにひた隠しにしている。山本五十六をかばい、自分たち全員をかばっている。せっかく国民に人気が高いのだから、わざわざ言うことはないということらしい。(『人間はなぜ戦争をするのか』1996年/クレスト社)


詳しいことは本で読んでいただきたいが、少なくともガダルカナル島艦砲射撃は山本五十六が「国益より省益を優先」した戦闘であって、そんなくだらない時間つぶしをしてるうちに、アメリカは東京大空襲や原爆投下の準備をしてたというわけだ。
最近では同じく「国益より省益を優先」した結果、消費増税が決定したが、国をおかしくする原因はいつも同じということなんだろう。


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