プロフィール

竹波エーイチ

Author:竹波エーイチ
1967年生まれのおっさん。
一つの 「カテゴリ」 で一つの記事となってます(記事は古い順に並んでます)。同世代のおっさん向け。

カテゴリ
もくじ

全ての記事タイトルを表示する

ブログ内検索
月別アーカイブ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

主要記事
リンク
応援中
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

フリーエリア
趣味 - シュミラン

ウルトラマン『故郷は地球』は名作か?

農村を襲うジャミラ
【ご注意】この記事は『ウルトラマン』全体について書いた長文の導入部となります。単独では情報不足ですので、お手数ですが「カテゴリ:ウルトラマン」にお回りください。



怪獣ジャミラの登場する『故郷は地球』は、ウルトラマン全39話のなかでも最も人気のある作品のようだ。2008年4月に放映されたNHK「BS熱中夜話」でも、第1話や最終回をおさえて堂々の人気第1位に輝いている。
そんな人気者、ジャミラとはどんな怪獣だったか。
客観的にみた、『故郷は地球』のあらすじはこうだ。

ある国に、ジャミラという科学者がいた。彼は有人人工衛星のパイロットとなって宇宙に旅立ったが、ついに帰還することはなかった。ジャミラの本国は、その事実を隠蔽した。
ジャミラはどこかの星で自分のロケットを「見えないロケット」に改造した。その間に彼はどういうわけか怪獣になっていた。

ジャミラが「地球の全人類に対する恨みと呪いの心」を持っていることを知っていた科学特捜隊パリ本部は、ジャミラが地球に戻ってくることを予期していた。ジャミラが狙うとしたら日本で開かれる国際平和会議だと考えた科特隊本部は、アラン隊員を日本に送り込んだ。
本部の予想通り、ジャミラは、国際平和会議に出席するために日本に向かっていた各国の代表者が乗っていた大型旅客機や船舶を破壊した。数百~数千におよぶ人々が大切な命を失った。

科特隊との戦闘で乗ってきたロケットを失ったジャミラは、徒歩で国際平和会議会場に向かい、たまたま通り道にあった農村を焼き払った。ジャミラには火焔による攻撃は効果がないと知った科特隊と防衛軍は、水流による攻撃に切りかえた。
そこにウルトラマンが登場。ウルトラマンもやはり、ジャミラの弱点である水を手から出す。
ジャミラは国際平和会議会場を目前にして、ついに息絶える・・・。



・・・これが39本もある『ウルトラマン』で、人気第一位になるほどの名作か?

ストーリーを簡単にまとめれば、宇宙で遭難してしまった宇宙飛行士が、どういうわけか(本国の宇宙局ではなく)「地球の全人類に対する恨みと呪いの心」を持ち、(全人類からしてみれば)いわれのない復讐をしにくる、という話だろう。つまりは逆ギレ、逆恨み、八つ当たりの類いだ。
それがどうして人気第一位の名作なのか。

このことは、ジャミラがどのタイミングで「地球の全人類に対する恨みと呪いの心」を持ったかを考えれば、ますます不思議になってくる。
ジャミラがそんな心を持っていることは、科特隊パリ本部からの伝令によって明らかになったことだ。つまり科特隊パリ本部は、ジャミラの存在も、その「地球の全人類に対する恨みと呪いの心」も、あらかじめ知っていた。しかし、遭難後のジャミラの行方は不明だったんだから、ジャミラが「恨みと呪いの心」を表明できたとすれば、まさしく遭難直後に他ならない。

ぼくなりに想像するに、おそらくジャミラの人工衛星に異常が起こった時、まだ本国との通信機能は維持されていたのだろう。そしてジャミラの本国は直接ジャミラに向かって、もはや宇宙空間での救出が不可能であることを告げてしまったのだと思う。これを聞いたジャミラが「恨みと呪いの心」を表明したことは想像に難くない。
が、なぜ「全人類」なんだ?
なぜ、ぼくや貴方や可愛い赤ちゃんまでもが、ジャミラの殺意の対象にならなければいけないんだ?

ここでジャミラが「科学のために」犠牲になったと考えるのは、余りにうかつと言うものだろう。
そもそも宇宙飛行士というのはエリート中のエリートの科学者であって、普通は志願して、厳しい競争を勝ち抜いてようやく就ける名誉ある仕事だ。宇宙で殉職するのは本望と言ってもいいかもしれない。宇宙への限りない夢を追ったのは、まさに彼ら科学者自身だったのだから。

となると、一体ジャミラはなぜ「地球の全人類に対する恨みと呪いの心」を持ったのか。

ぼくの本音を言えば、そんなことは分かるわけがないだろう、ということになる。
上記のあらすじを見てもらえば分かるように、ジャミラは数十年もの間、何の関わりもない「全人類」への一方的な復讐心を持続させることができた上に、地球に戻ってくるや否や、問答無用で大量殺戮を繰り返した男だ。こんなに執拗で残虐な人間の心理など、平凡な小市民のぼくに理解できるはずがない。犯罪心理学の先生にでも聞くしかないだろう。

ところが驚いたことにNHK「BS熱中夜話」では、この『故郷は地球』が、とある学校の国語の授業の教材として使われていることが報じられている。
http://www.nhk.or.jp/nettyu/2008/ultraman/0417/index.html(リンク切れ)

で、『故郷は地球』を観たあとは、次のような問題に答えなくてはならないらしい。

1 ジャミラはどのような思いで地球に戻ってきたと考えられますか。
2 この作品の中での犠牲者は誰ですか。
3 ウルトラマンができたこと、できなかったことはそれぞれ何ですか。
4 イデ隊員はなぜ戦うことをやめようとしたのですか。
5 ジャミラはなぜ最後まで、平和会議場を目指したのですか。
6 この作品の中で作者が訴えたかったことはどのようなことだと思いますか。
7 感想や、その他、気付いたことを書きましょう。


この問題を作ったのが、この学校の先生なのかNHKなのかは知らないが、「生徒の読解力を養う」ための出題でないことは明らかだ。自由な読解を求めているのではなく、定められた「正解」に誘導しようとする意図が見え見えすぎるからだ。

まず問1。これはジャミラには何らかの同情すべき「思い」があるかのように誘導している。しかし実際のところ、ジャミラはもはや殺人を繰り返す怪物であって、そんなジャミラに同情するのは「人権派弁護士」と同じ思考を持つことになる。つまり殺す側にも理由がある、というやつだ。このとき、ジャミラに殺された数百~数千の被害者の「思い」は全く考慮されることはない。

問2。犠牲者は何の罪もない旅客機や船舶の乗客と、家を焼かれた農村の人々だ。しかし問1によって、すでにジャミラに同情するように仕向けられているため、何となくジャミラ以外を選びにくい雰囲気になっている。

問3。ウルトラマンができなかったこと、という設問自体が素晴らしい。ウルトラマンはいつもどおりのウルトラマンで、3分以内に怪獣を始末するのが彼の役回りだ。しかしここでは、”今回に限ってはできなかったことがあったのだ”という出題者の思想そのものが押し付けられている。ぼくならこんな愚問には白紙で回答するが、強いて書くなら、ジャミラは火に強いのでスペシウム光線を使えなかったこと、とする。

問4 これはまあ普通の設問と言っていいだろう。イデ自身が劇中で、ジャミラは自分より年長の人間だから、と言っている。元人間だから、さらに科学者としての先輩だから戦えない。イデの個人的な感傷だが、イデ本人が言うんだからそうなんだろう。何かイデ個人の隠れたコンプレックスに触れるものがあったのかもしれない。ただ、これを一般論に拡大しようというのなら、それも出題者の押しつけだ。現に、イデとずっと行動をともにしていた他の隊員はジャミラに同情していない。

問5。だーかーらー、精神異常者の考えることなんて、常人には理解できないんだってば。平和会議の出席者のなかに、自分を見捨てた上司でもいたんじゃないの? だって宇宙開発と平和会議には何の関係もないわけでしょ? そこにいるのが「各国の代表」だから、人類を代表して殺されてくれってことか? マザーテレサとかも参加してるかもしれないのに。

問6。ジャミラに謝れってことだろう? 犠牲者=弱者=正義って、朝日新聞の論理だな。つまりは自虐史観だ。そもそもジャミラは誰かにわざと人工衛星を壊されたわけじゃないだろ? 2008年の技術を持ってしても、宇宙空間で軌道を離れてしまった衛星を探索することなんてできない。それが何で、ぼくや、この文を読んでいるあなたの責任になるんだよ。何なんだ、このストーリーは。

問7。・・・


思わず興奮してしまったが、もちろんこのテストの件をもって、『故郷は地球』を名作ではないと言うつもりはない。実相寺昭雄監督の独特の映像美は、いま観ても古さを感じない。
しかし、なぜ1位なのか。1位というからには、それが『ウルトラマン』全39話を代表するエピソードであると見られることは自然な成り行きだろう。

しかし、上記のテスト「問3」のように、この時のウルトラマンには「できなかったこと」があると見る人もいる。問いの答えははおそらく、元は人間だったジャミラを助けられなかったこと、なんだろう。「光の国からぼくらのために」地球にやって来た、人間の味方であるはずのウルトラマンが、結果的には”人間”ジャミラを殺してしまった。そんなウルトラマンは、本当に「正義のために」と言えるのか?

そういった発想が「問3」の根底にはあるのだろう。
そしてそれがまた、勧善懲悪を超えたストーリーとして、大人になったファンからの支持を集めていることは想像に難くはない。

だが、もしもその前提が間違っていたとしたらどうだろう。
ウルトラマンが地球に来たのは、「ぼくらのために」でも「正義のために」でもなかったとしたら。それでもウルトラマンが”人間”ジャミラを殺したことは、彼の正義と矛盾する大問題と見なされるべきことなんだろうか?

・・・そもそも『ウルトラマン』とは、一体どういった物語だったのだろう。

つづく




※類似記事:ジャミラは可哀想か?
      故郷は地球vsまぼろしの雪山

 関連記事:ノンマルトの使者
      怪獣使いと少年



【追記】
『ウルトラマン』制作当時の実相寺昭雄氏への周りの評価は

「空の贈り物」http://takenami1967.blog64.fc2.com/blog-entry-27.html

実相寺氏の、怪獣やウルトラマンへの考え方は
「故郷は地球vsまぼろしの雪山」http://takenami1967.blog64.fc2.com/blog-entry-29.html
「地上破壊工作vs怪獣殿下」http://takenami1967.blog64.fc2.com/blog-entry-30.html
にお回りください。

佐々木守氏のヒーロー観はこちら。
「怪獣墓場<シーボーズ>」http://takenami1967.blog64.fc2.com/blog-entry-31.html
「アイアンキング」http://takenami1967.blog64.fc2.com/blog-category-5.html