
すでに見てきたように、1954年の『ゴジラ』に始まる東宝怪獣シリーズには二つの怪獣観が存在したと言える。一つは、黒沼健〜馬淵薫に見られる、怪獣を「単なる巨大な動物」と捉える怪獣観。ラドン、バラゴン、ゴロザウルスなどがそうだ。そしてもう一つが、香山滋〜関沢新一が描く、怪獣にある種の「神性」を見る怪獣観。バラン、モスラ、マンダ、キングシーサー、そしてゴジラなどが該当する。
さて、それでは金城哲夫が指揮する『ウルトラマン』で、怪獣はどのように描かれたのだろう。
まず第3話「科特隊出撃せよ」のネロンガ。
ネロンガはその昔、村井せいえもん(wikiによる)という武士に退治された怪物だったという。人間が倒せたというのだから、せいぜい数メートルの大きさだったのだろう。しかしネロンガは地中で生きていて、付近に建設された発電所の電気エネルギーを吸収することで巨大化してしまった。普段は透明で眼に見えないが、電気を食べる時だけ姿を表す(wiki)。電気を食うために、水力発電所、変電所、火力発電所を破壊した。
第4話「大爆発五秒前」のラゴン。
もともとは2億年前の爬虫類が進化した「日本海溝に住む海底原人」だったが、「爆発した原爆の放射能で突然変異を起こした」と考えられた。その際2メートルだった体長は30メートルに巨大化した。海上保安庁の巡視船を沈めた後、葉山マリーナに上陸して暴れ回った(wiki参照)。
第5話「ミロガンダの秘密」のグリーンモンス。
オイリス島という秘境から調査団の手によって日本に持ちこまれた食虫植物が、品種改良のために放射能を浴びせられて怪物になった。自らの成長に欠かせないオイリス島にしか存在しない栄養素を補うため、オイリス島の水を飲んで帰ってきた調査隊員たちを襲う。鉢植えサイズから等身大まで成長し、さらにスーパーガンのエネルギーを吸収して巨大化した(一部wiki引用)。
第6話「沿岸警備命令」のゲスラ。
「ゲスラは南米に住んでいるトカゲの一種でカカオの実が大好きなんじゃ。それにカカオの実にたかる害虫まで退治するいいトカゲなんだ」(劇中の斧山船員の談話)
しかし南米航路のコロンビア丸の積み荷にまじって来日してしまった一匹が、東京湾の汚水の影響で巨大化。横浜港で暴れ回った。
細かい説明になってしまったが、強引にまとめてしまえばこうだ。
『ウルトラマン』の怪獣とは、もともとは人間世界の外部、あるいは内部にある秘境(井戸の奥の洞窟など)に存在して人間に害をなさなかったものが、人間側のアクションによって怪物となって暴れ回ったものだと。
こういった怪獣のありようが最も顕著に出ているのが、第8話「怪獣無法地帯」だろう。
「火山噴火のために無人島になっていた多々良島に2年半ぶりに定点観測所を再開」してみたら、そこはレッドキングやチャンドラーやマグラといった怪獣がウヨウヨしている島になっていた。もしも定点観測所が再開されることがなければ、怪獣たちは人間に害をなすことも、退治されることもなかったというわけだ。
この「怪獣無法地帯」は極端な例としても、それでは『ウルトラマン』の怪獣とは、ただの巨大な動物だったのだろうか、それとも(ゴジラやモスラのような)何らかの神性をおびた存在だったのだろうか。
結論から言ってしまえば、ネロンガもラゴンも、やはりゴジラのような神性を持っていたのではないかとぼくは思う。それは彼らの破壊活動が怒りに満ちていて、どこか人間の行いを罰しているような印象があるからだ。
つまり怪獣とは、八百万の神々が人間に祟りをなしている姿ではないのか。
この八百万の神というのは、おそらく一神教の人々には全く理解できないものだろう。
しかし日本人は古来より、あらゆる自然物に神が宿っているという感覚を持ってきた。言うまでもなくこの「神」は、一神教のGod、造物主とは異なる。人格のようなものを持った何か、だ。
外来の一神教の影響をほとんど受けなかった日本では、この感覚は現代人でも多く持っているものだろう。少なくとも1966年当時の日本人であれば、大人も子どももこの感覚を肌で感じることができただろう。だからこそあの時代の日本では、世界に類を見ない怪獣の大量生産が実現したのだとぼくは思う。
「怪獣というのは、もの言わぬ自然の表象」というのは『ゴジラ』の監督、本多猪四郎の言葉だそうだ(『怪獣な日々』実相寺昭雄著より)。
そして日本人にとっては、「自然」であることはイコール「神」だった。
同じく実相寺昭雄の『怪獣な日々』によれば、金城哲夫はまず怪獣の名前を考えて、そこからストーリーを作るという離れ業を得意としたそうだ。つまり、まず「怪獣」ありき。
であるならば『ウルトラマン』のそれぞれのエピソードとは、その回に登場する「神」の物語、すなわち列伝体の「神話」であると考えることもできるだろう。
怪獣は神。
それならそれらと戦ったウルトラマンとは何だったのだろう。
つづく















