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竹波エーイチ

Author:竹波エーイチ
1967年生まれのおっさん。
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空の贈り物 〜スカイドン

科特隊は気楽な稼業

1966年当時、TBS系の『ウルトラマン』を製作するかたわら、日本テレビ系で『快獣ブースカ』も手がけていた円谷プロは、慢性的な人材不足に悩まされていたそうだ。そこでまずTBSからディレクターとして実相寺昭雄が出向、さらにその実相寺の推薦で脚本家・佐々木守が『ウルトラマン』に参加することになった。そして実相寺と佐々木はコンビを組み、「故郷は地球」を初めとした多くの作品を『ウルトラマン』に残すことになった。

そんな実相寺/佐々木作品だが、2008年現在のウルトラファンの間では非常に高い支持を受けているようだ。
2008年4月にNHKで放映された「BS熱中夜話ウルトラマンナイト」で『ウルトラマン』の人気投票を行ったところ、実相寺/佐々木作品はベスト10に3本も入っている。「故郷は地球」(1位)「怪獣墓場」(3位)「空の贈り物」(9位)がそれだ。

実相寺/佐々木が作った『ウルトラマン』は全39話中6本だけだから、この成績は素晴らしいものがある。残る7本のうち6本はメインライターの金城哲夫がいろいろな監督と組んで作った作品であることを考えると、実相寺/佐々木こそが金城に次ぐ『ウルトラマン』の主力作家であったことを想像させるに足る成績と見ることもできるだろう。

が、実際はどうだったのか?
本当に実相寺/佐々木は、『ウルトラマン』の主戦級の作家だったのか?

『ウルトラマン』第34話「空の贈り物」。
あらすじは至って簡単なものだ。あるとき東京の晴海埋め立て地に、宇宙から怪獣スカイドンが落ちて来た。このスカイドンは落下の直後は口から火を吐いたりしたものの、あとは特に暴れるでもなくぼーっとしているだけの怪獣だった。
しかしとてつもなく重い怪獣で、その体重は20万トン。ウルトラマンの約6倍だ。しかもスカイドンは、とんでもなく頑丈でもあった。
手を焼いた科特隊は、なんとかしてスカイドンを宇宙に帰そうとするが、いずれの作戦も失敗に終わってしまう。ウルトラマンも打つ手がなく、すごすごと飛び去ってしまった。科特隊は最後にスカイドンに大量の水素を注入することで風船化し、どうにか宇宙まで飛ばすことに成功する。
が、これを誤って自衛隊の戦闘機が撃墜してしまい、スカイドンは落下してくる。ハヤタは再びウルトラマンに変身すると空中でスカイドンと正面衝突し、スカイドンを爆死させたのだった・・・。

この作品が放映された直後の円谷プロ内部での反応を、上原正三が書いた『金城哲夫ウルトラマン島唄』から引用するとこうだ。

「見た、金ちゃん」企画室にやって来た野長瀬三摩地が頬を膨らませて金城に食いついた。
「え、なんです?」
「実相寺よ」
「ああ、見ましたよ」
「許されるわけ? あんなことが」野長瀬は憤懣やるかたない表情だ。
実相寺昭雄作品「空の贈り物」(脚本・佐々木守)で主人公のハヤタが変身する際にフラッシュ・ビームの代わりにスプーンを差し上げたのだ。勿論ギャグである。
「TBSだからな。やりたい放題だよ」と不満を口にする若いスタッフも確かにいた。野長瀬は、長いこと黒澤明監督の助監督を務めて来た。黒澤監督は小道具の一つにまで気配りする完全主義者。野長瀬はそんな監督の薫陶を受けて育った。その自負は相当なものだった。映画を聖職と考え、生真面目で折り目正しい演出を心がけていた。ヒーローは神聖なるものだ。そのヒーローにみっともない真似させていいのかというのが野長瀬の言い分。


野長瀬三摩地監督は『ウルトラQ』以来の円谷プロの主戦監督だ。Qでは「ペギラが来た!」「風船怪獣バルンガ」「ガラモンの逆襲」などを、マンでも「大爆発五秒前」「バラージの青い石」などを監督している。
その野長瀬が「頬を膨らませ」「憤懣やるかたない表情」をし、若いスタッフは実相寺がTBSの威を借りて「やりたい放題」と不満を口にする・・・。

どうやら、とても歓迎されている雰囲気ではないようだ。

上原正三は「スプーン」を問題にしているが、実は「空の贈り物」の「ギャグ」はそれだけにとどまらない。
まず冒頭、真っ昼間から喫茶店でさぼっているムラマツ隊長がいる。隊長は雨が降ってくるのを見ると、本部に連絡して傘を持って来いと言う。その連絡を受けたアキコはそのとき大福を両手にもって頬張っていて、ハヤタはのんびり爪を研いでいる。
ハヤタは傘を届けるためにビートルで出撃し、赤坂の上空から傘を放り投げる。
スカイドンが晴海に墜落してきたのは夜だったが、隊員たちは急報を受けたときまだパジャマ姿。ムラマツは制服を着ているものの、後ろ前になっている。
「オートジャイロ作戦」が成功したと思った隊員たちは、まだ明るいうちから全員でビールで乾杯している。イデは鼻毛を抜いていて、ハヤタはアラシにマッサージをしてもらっている。
「風船化作戦」のあとは、隊員全員でカレーライスを食べている。そこへ自衛隊からスカイドン撃墜の報があり、あわてて飛び出したハヤタが掲げてしまったのがスプーンだったのだった・・・。


こういった、とても真剣に地球の平和を守っているようには思えない科特隊の姿は、大人が見れば「ギャグ」だと分かるものだろう。こんなだらけた組織は民間にだってありえない。現実には存在しない、デフォルメだ。
しかしこの番組を観ているのは幼い子どもたちだ。
野長瀬は、視聴者の子どもたちがこんな「みっともない」科特隊を観てどう感じるかを問題にしているのだと思う。普段は立派に見える大人たちが、見えないところではこんな風にだらけた態度をとっているとしたら、そんな大人たちを子どもたちはこれまで通り尊敬できるだろうか、と。
学校の先生も、警察官も消防士も、役人や総理大臣だって、見えないところでは鼻毛を抜いて大福でのどを詰まらせているんじゃないか。この放送をきっかけに、そんな疑いに取り憑かれる子どもが現れたとしても不思議なことではないだろう。なにしろ60年代といえば、子どもは今よりもっと単純なものだった。

一体、実相寺昭雄と佐々木守はどうしてこんな作品を作ったのだろう。彼らは『ウルトラマン』での彼らの作品を通して、子どもたちに何を伝えようしたのだろう。
このコンビによる『ウルトラマン』でのデビュー作は、怪獣ガマクジラが登場する第14話「真珠貝防衛指令」だった。ガマクジラは真珠を食べる怪獣だ。女性隊員のアキコは「女の夢を壊さないでー」と激しく怒る。
つまり、この回のウルトラマンの相手は「女性の敵」だった。「人類の敵」とまで言われたゴジラとは大違いだ。ガマクジラはただ真珠を食べているだけで、そういう間抜けな相手とウルトラマンは戦わされた。

ぼくの結論を言ってしまえば、実相寺/佐々木は、ヒーローの破壊を目論んだのだと思う。
それはなぜか。
これも結論から言うと、彼らが「左翼」の人だからだ。wikipediaには「佐々木守」について次のような記述がある。

1960年に日本共産党に入党(数ヶ月で離党)した経験から、政治思想的には左翼のスタンスであり、後年のインタビューなどでも「今でも機動隊のバスを見かけると怒りがこみ上げて体が熱くなってくるんですよ」「なぜ今の若者は国に怒りを持たないのだろう」等と述懐しているほか、「今の日本の諸悪の根元は天皇制にあります」などと反皇室思想を明確に表明していた


「実相寺昭雄」についてはこう。

大島渚グループとの親交が深く、劇場用デビュー中篇「宵闇せまれば」の脚本を大島が執筆したほか、田村孟、佐々木守、石堂淑郎らの脚本が多い。とりわけ、現在からは信じがたいほど左翼色濃厚な作家だった石堂とはデビュー長編「無常」以下「曼陀羅」「哥」のATG三部作でタッグを組み・・・



『ウルトラマン』の中でも、選り抜きの名作と言われる「故郷は地球」「怪獣墓場」「空の贈り物」は、こういった活動をしていた二人の左翼によって作られたものだった。
では、そんな二人を金城哲夫はどう見ていたのか。
『金城哲夫ウルトラマン島唄』から、先ほどの金城と野長瀬の会話の続きを引用するとこうだ。

「ぼくは面白かったけど」
「本当に?」
「ええ」
「おやじさんは?(※円谷英二のこと)見たんでしょ」
「おやじも、別に、いいんじゃないかって」
「そう言ったの?」
「ええ、テレビだから、いいんじゃないかって。面白いよって」
「そうかなあ、テレビだから・・・」野長瀬は小さな声で呟き、口をつぐんだ。

このやりとりを見て、金城が実相寺/佐々木を心から歓迎していると感じる人はいないだろう。金城は明らかに戸惑い、はっきりとした答えを出さないようにしている・・・。

と、ぼくが思うのは、『ウルトラマン』には実相寺/佐々木と金城との間に、秘かな対決が存在するような気がするからだ。対決というと大げさだが、暴走する実相寺/佐々木に、金城が歯止めをかけようとしている作品が見受けられるように思える。
それはまず、実相寺/佐々木の「恐怖の宇宙線」対、金城の「恐怖のルート87」として現れた。

つづく