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竹波エーイチ

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必殺!流星キック ~郷秀樹と坂田次郎くん

次郎

『帰ってきたウルトラマン』のメインライター上原正三は『金城哲夫ウルトラマン島唄』(筑摩書房)のなかで、彼の新番組に付加しようとした「新しい要素」について次のように述べている。

私達は『柔道一直線』の要素を取り入れることにした。主人公の郷秀樹の人間的な成長ドラマをタテ軸にすることになった。郷を坂田自動車で働く若者という設定にし、工場を経営する坂田兄妹とのふれあいを大事にした。主人公をエリートではなく、隣のお兄ちゃんにすることで視聴者の目線にヒーローを引き寄せることが出来るのではないかと考えたのである。

言うまでもないが、これは番組当初の「プラン」だ。番組は生き物だから、時間が経つにつれて制作者の手を離れて一人歩きしてしまうことは往々にある。『帰ってきたウルトラマン』でそれが顕著に出てしまったのが、上記引用で語られていない坂田家の次男、11才の小学生、次郎くんだ。

実のところ、坂田自動車の従業員だった郷秀樹がMATに入ることは、次郎くん以外の二人にとってはあまり歓迎できるようなことではなかった。兄の坂田健(28才)には、事故で足を悪くしてしまった自分の代わりに、郷に自動車レースで優勝してもらいたいという夢があった。また姉の坂田アキ(18才)には、ハンサムで長身の郷との幸せな結婚の夢があった。
が、いずれの夢も郷がMAT隊員になったことで、不可能ではないものの時間的には遠のいてしまった。

一方、次郎くんはと言えば、その夢はそのものズバリ、MATに入ることだった。
・・・郷秀樹。ここに、そんな次郎くんの夢を実現した男がいる。しかもその郷はエリートでも何でもなく、ただその無私で勇敢な行為がたまたまMAT加藤隊長の目にとまり、一度は死んだはずの肉体が(ウルトラマンとの同化によって)奇跡の復活を遂げたことで、そのチャンスを掴んだ普通の男だった。
だから次郎くんにはこの時、労せずして自分の人生の夢のお手本が誕生してしまった。郷さんのように生きれば、自分も憧れのMATに入れることを知った(※)。

もちろん、当時の視聴者だったぼくら子どもたちだって同じだ。

・・・と言いたいところだが、おそらくそうではなかった。それは、次郎くんの家庭環境の特殊さのためだ。
見ての通りで次郎くんには歳の離れた兄と姉しかいない。しかも兄の健は足が悪くて全力疾走もままならない。姉のアキはお年頃の娘さんで、しばしば郷の取り合いになる。つまりこの二人は次郎くんの両親の代わりを完全に務めることはできない。
もちろん二人とも次郎くんを愛しているので「母性」は足りている。問題は「父性」だ。時として、体で示さなければならない父性を、健は次郎くんに与えることが難しい。結果、次郎くんはそれを郷に求める局面が増えてくるというわけだ。

第4話「必殺!流星キック」(脚本:上原正三)
この回、キングザウルス三世に敗れた郷は、かつてレーサーとなるために厳しい特訓を行った平井峠で、キングザウルス三世のバリアを飛び越す勇気を得ようとしていた。もちろん郷がいかに激しいトレーニングをしようとウルトラマンの能力が上がるとは思えないが、おそらく郷は、自分の未熟な精神力がウルトラマンに悪影響を及ぼしている可能性があると考えたのだろう。つまりトレーニング自体は、気休めのようなものだった。
ところがこの様子を次郎くんが見ていたことで、このトレーニングには別の意味が付加されてしまった。

兄の健は足が悪い。しかしこの時、同じように郷秀樹も足を負傷していた。だが郷は、強大な怪獣と戦うために、自らの力でその負傷を乗り越えていった。次郎くんが見たのはその姿だった。そしてこの瞬間、まだ幼い次郎くんに与えられるべき「父性」は、兄の健から郷秀樹に移動した。
これがこの回の「肝」だ。

ただ、この時点では上原自身もこのエピソードが生んだ意味を、あまり深くは把握していなかったようだ。次郎くんはアキに、なぜ郷があんなことをしているのかと聞いているくらいだからだ。
しかし回が進むにつれ、ややマンネリ化していった「坂田兄妹とのふれあい」とは反比例するかのように、郷と次郎くんのふれあい(と、ぶつかり合い)は深まっていく。

第19話「宇宙から来た透明怪獣」(脚本:上原正三)
宇宙から飛来した隕石は、次郎くんの通う学校で巨大な怪獣サータンに変化した。校舎が崩落し、瓦礫が降り注ぐなか、次郎くんは飼育小屋のウサギを助けるために走っていく。このシーンが、第1話「怪獣総進撃」で、郷秀樹が子どもと子犬を助けようとして死んでいったあの光景とダブらされていることは言うまでもないだろう。
入院先の病院では軽症と診断された次郎くんだったが、MATがサータンに敗れたことを知ると、意識不明の重体に陥ってしまう。次郎くんを看た医者は言う。
「この子の場合、MATと一緒になって一生懸命、怪獣と戦ったんじゃないかな。そしてMATが敗れたと知ったとき、精魂尽き果てたんだ」
サータンの打倒策が見つからず、弱気になる郷に健はこう言う。

「次郎の机の上にはね、お前の写真が飾ってあるんだよ。学校に出かけるときは、行って参ります。帰ってくれば、ただいまと挨拶をおくっている。次郎にとってお前は、心の支えなんだ。夢なんだ」

いくら郷を励ますためとは言え、こんなことを白状しなければならない健も気の毒な人だが、次郎くんの思いを知った郷は奮起して再びサータンに立ち向かっていく。
そしてウルトラマンがサータンを倒したころ、次郎くんは夢を見ていた。それはウルトラマンにおぶさって、空を飛んでいる夢だった。やがて次郎くんが目を覚ますと、病室にボロボロになった郷が戻ってくる。
「勝ったぞ」
がっちり握手を交わす二人だった。

もちろん、この夢が表すものが、次郎くんが郷がウルトラマンであると知っていたという意味ではないだろう。次郎くんが憧れていたのは、あくまでMAT隊員の人間郷秀樹だ。しかし混濁する意識が、それをウルトラマンに見せた。

さて、こんな感じで進んでいく郷と次郎くんの物語だったが、第37話「ウルトラマン夕陽に死す」で大転換を向かえることになる。肉親の健とアキが、ナックル星人によってあっさりと殺害されてしまうのだ。天涯孤独になった次郎くんは、いよいよ郷のマンションで二人で暮らすようになる。そしてこの時、郷と次郎くんの間で、ある誓いが交わされる。それが最終回のタイトルでもある「ウルトラ5つの誓い」だ。
そしてこのときから次郎くんは、その誓いを規範として日々の生活を送っていくことになるわけだが、次郎くんの物語には最終回までこれといった大きな変化はない。

というわけで『帰ってきたウルトラマン』のもう一つの舞台に話を移したい。
MATの物語だ。

つづく



(※)死からの生還についてはどのみち誰にも理由は分からなかったわけだし、おそらく郷が死なずに重傷からの回復であったとしても、加藤隊長は郷をMATに勧誘しただろうと思う。


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