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竹波エーイチ

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1967年生まれのおっさん。
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怪獣総進撃 :ウルトラマンはなぜ帰ってきたか?

タッコング対ザザーン

ウルトラマンはなぜ帰ってきたのか?
これを、異常気象による地殻の変動によって怪獣たちが一斉に目を覚ましたから、で片付けてしまうことは、金城哲夫や上原正三、さらには橋本洋二をバカにした態度ともいえるだろう。

金城哲夫は『ウルトラマン』の最終回で現れたゾフィーにこう言わせた。
「地球の平和は人間の手でつかみとることに価値がある。ウルトラマン、いつまでも地球にいてはいかん」
その言葉に呼応するように、科特隊のムラマツ隊長も、ウルトラ警備隊のキリヤマ隊長も、地球は我々人類自らの手で守らねばならんのだと叫んだ。
この叫び、彼らの誓いを、金城の後を受け継いだ盟友・上原正三が覚えていないはずはない。
ならば怪獣が現れたくらいでホイホイとウルトラマンが帰ってきてしまっては、彼らの誓いはただの口先だけのものになり下がる。

一方、『帰ってきたウルトラマン』のプロデューサー、橋本洋二は、子ども番組に劇画的リアリズムを持ち込んだ人だと言われている。橋本の参加によって、それまでややステレオタイプだった登場人物たちに命が吹き込まれ、複雑で生き生きとした人間模様が表現されるようになった。

ではそんなリアリズムが、怪獣が出たからウルトラマンが帰ってきた、などという投げやりな説明を由とするものだろうか。地球にむかう時のウルトラマンはどういう気持ちだったの、とか、ウルトラマンは朝食は何を食べてきたの、とか聞きそうなものじゃないか。

じゃあウルトラマンはなぜ帰ってきたというのか。
それにはウルトラマンが帰ってきた、まさにその瞬間を捉えればいいはずだ。

『帰ってきたウルトラマン』第1話「怪獣総進撃
この記念すべき第1話は、いきなり怪獣タッコングとザザーンが勝鬨橋近辺で格闘しているシーンから始まる(ということは第33話「怪獣使いと少年」の舞台は本当は隅田川ということになるが、まあどうでもいいか)。で、この時点ではウルトラマンがどこで何をしているかはわからない。

カメラは坂田家に移り、次郎くんが怪獣を倒すと言って走っていくのを、郷が追いかけていく。郷はなんとか次郎くんに追いつく。するとそこへ、団地に残された子どもを助けるために、MATの加藤隊長が駆けつけてくる。郷は次郎くんを加藤隊長に預けると、自分が団地に残された子どもを助けにいく。そして子どもと犬をかばって、自分が落石を受けてしまう。
その一部始終を加藤隊長が見ていた・・・。

その瞬間だ。
まばゆい光が走り、何かを恐れたようにタッコングが海に逃げていったこの瞬間、ウルトラマンは「帰ってきた」。

結局、郷は加藤隊長が見守る中、息を引き取る。しかしその夜、郷とウルトラマンは一心同体になり、郷は生き返る。翌日、郷の蘇生を聞いた加藤隊長は、郷をMATに迎え入れようと坂田家におもむく。加藤隊長の、突然かつ一方的な申し出を思わず断りそうになる郷。すると郷の耳に、ふいに怪獣の鳴き声が聴こえてくる。郷は「誰かが俺を呼んでいる」とつぶやくと、車に乗り込んで時速150キロで疾走し、怪獣アーストロンが暴れている現場に向かう。
アーストロンは無事ウルトラマンに退治され、郷はその現場近くの河原で倒れている。そこへ加藤隊長らMAT隊員がやってきて郷を発見する。加藤隊長は郷をメンバーに紹介し、否応無しに郷はMATの隊員になったのだった・・・。

以上が「怪獣総進撃」で語られた、郷がウルトラマンと一心同体になり、MATに入隊するまでのあらましだ。
ここで明らかなことは、いつでも加藤隊長がキーマンになっているということだ。郷秀樹が無私で勇敢だったから、ウルトラマンが彼を選んだのではない。その様子を加藤隊長が見ていたから、さらには加藤隊長が郷をMATに欲しがることが予測できたから、ウルトラマンは郷を選んだ。だから郷が加藤隊長の勧誘を断りそうになったときも、ウルトラマンは慌てて干渉してそれを遮っている。

リアリズムで考えれば、あのとき勝鬨橋近辺で無私で勇敢な行動をとったのは、何も郷秀樹一人だけではないだろう。そしてそのなかには、同じように尊い命を落とした人もいただろう。では、そんな名もなき勇者たちと郷秀樹の差は何か。
その答えは、郷がきわめて自然な成り行きでMATに勧誘されそうな唯一の人間だったから、以外には考えにくい。

それでは何故、ウルトラマンはMATに入る必要があったのか。それは、
地球の平和は人間の手でつかみとることに価値がある
というゾフィーの言葉、そして、それに応えたムラマツとキリヤマ両隊長の誓いを実現させるためだ。

彼らには科特隊、ウルトラ警備隊という自衛力の器があった。しかし、MATはこれまでさんざん見てきたように、今まさにその手から地球(はっきり言えば日本)を守るために必要な自衛力を取り上げられようとしていた。

だからウルトラマンは、MATの一部となって勝利を収めなければならなかった。そのために郷という追加の戦力となり、ウルトラマンという最終兵器になる必要があった。すべてはMATを存続させ、日本人の手で日本という国を守っていくために、だ。
そう考えることが、金城の思いと橋本のリアリズムという背景から、自然に導かれる結論であるようにぼくは思う。

一説によると、加藤の後任の伊吹隊長は郷秀樹がウルトラマンであることを知っていた、という噂がある。
その伊吹は最終回、戦死した郷秀樹の墓標にむかってこう言った。
「さあ、我々はいつまでも悲しんでばかりはおれんぞ。破壊されたMAT基地の再建をはかること。おそらく郷も、それを一番望んでいるであろう」
ぼくには伊吹には、ウルトラマンの願いすら分かっていたようにも思える。


さて、ここまでの長話で、ようやく『帰ってきたウルトラマン』の全体像の、ぼくなりの説明は終わった。
ウルトラマンが帰ってきた理由、解散MAT、次郎くんの物語。
それらのパーツにどんな意味があったのか。

最終回、その全てはある一点に収斂する。



切通理作さんの名著『怪獣使いと少年 ウルトラマンの作家たち』によれば、第33話「怪獣使いと少年」のTBS内での受けは非常に悪く、上原正三は第38話を最後に「干されて」しまったそうだ。だから上原の復帰は最終回を待たなければならなかったのだが、本当に悔やまれることだ。もしも上原が第39話以降もメインライターとして活躍していたなら、『帰ってきたウルトラマン』はどれほどの名作になったものやら。
たった1本の異端作が、作品全体を台無しにしてしまった悪例の最たるものといえるだろう。

つづく


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