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竹波エーイチ

Author:竹波エーイチ
1967年生まれのおっさん。
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死刑!ウルトラ5兄弟 〜絶対悪=侵略者ヤプール

4兄弟の磔

『ウルトラマンA』が、前作『帰ってきたウルトラマン』までとは、全く異なる世界観から成る作品であることはすでに書いたとおりだが、重要なことなので、ここでもう一度繰り返したい(これがブログの面倒なところ)。

まず初代のウルトラマン。
あるとき彼は全くの偶然で、地球人ハヤタを殺害してしまった。すでに2万年も生きている彼は、光の国から代わりの「いのち」が届くまでのわずかな間、ハヤタに自分の命を貸してやることを思いついた。続いて彼は、ハヤタの死体に残留する思念を読んだ。すると、どうやらハヤタは地球の平和を守るために働く青年だと分かった。幸い、自分も同じような仕事をしている。では、二人で協力して、君(ハヤタ)の願いを叶えようじゃないか。
こうして『ウルトラマン』の物語はスタートした。

続いてウルトラセブン。
仕事の関係か、ただの寄り道かは不明だが、あるとき地球を訪れたウルトラセブンは、この美しい天体がとても好きになった。ところがこの惑星は、凶悪な侵略者、クール星人に狙われているじゃないか。セブンは薩摩次郎の姿を借りるとウルトラ警備隊に近づき、危険を忠告する。このとき結果的に隊員を助けることになったセブンは、請われてウルトラ警備隊の隊員となり、大好きな地球と警備隊の友人たちのために働くようになったのだった。

が、そんな彼らは、ゾフィーやセブン上司に「地球の平和は地球人の手で守るべきだ」と促されると、後ろ髪を引かれるような思いを残してM78星雲に帰って行った。

ところがそれからしばらく経つと、かつて「自分の手で守る」と誓ったはずの日本人が、MATチームを解散させ、国防を他人に頼ろうとしている雰囲気があることが分かった。そこで、新ウルトラマンは日本にやってくると、MAT存続と日本人の自立のために働いた。しかし、バット星人によるウルトラの星侵略作戦が始まったため、やむなくM78星雲に帰還することとなった。

この3人のウルトラマンの立場は明確で、彼らはいつでも人間の手助けをする者だった。その根底にあるものは人間への限りない友情の心で、彼らはできる限り人間の姿で怪獣や宇宙人と戦い、ウルトラマンの力を使うのは本当に事態が悪化してからだった。
そしてウルトラマンたちは人間の賢愚や善悪は問わず、そこにいる全ての人を救済しようとした。これは言い換えると、ウルトラマンは地球と人類に「母性」を示している、ということだった。

こんなところが前3作の概略なわけだが、要点としては、彼らは一様に人間に助力・協力をする存在だということと、彼らは地球と人間に「母性」を与えていたという2点になるだろう。

しかしすでに見たとおり『ウルトラマンA』にとっては、地球は彼とヤプールの戦いの「戦場」でしかなかった。
それは、そもそもの彼の地球来訪のきっかけが、地球にヤプールが侵略をかけたことにあったからだ。もしヤプールが地球を狙わなかったら、ウルトラマンAが地球にやってくることはなかった。

つまり、まず「悪」ありき。
「絶対悪」ヤプールがあって、それを追うように「正義」が誕生した。ウルトラマンAは、ウルトラ史上初めて、「正義」のために「悪」と戦うウルトラマンだった、ということだ。

そんなウルトラマンAが、他のウルトラマンと全く違うウルトラマンであることを更にハッキリと表しているのが次のエピソードだ。

『ウルトラマンA』第13話「死刑!ウルトラ5兄弟」。
このエピソードは、「兄弟愛」をテーマにした作品だ。
新聞配達の少年が、突然現れた超獣バラバに襲われる。少年はそのとき弟と一緒だったが、弟をかばって自分だけが殺される。弟は兄を殺した超獣に復讐を誓う・・・。
こうした伏線が張られた上で、今度はウルトラ兄弟の兄弟愛に話は進んでいく。

パトロール中の北斗と夕子のウルトラリングがふいに光り、天空に「ゴルゴダ星に集まれ」というウルトラサインがあがる。二人はその場でウルトラマンAに変身して、ゴルゴダ星に向かう。するとそこには、他のウルトラ兄弟たちも集まっていたが、誰も呼び出しサインを発した覚えはないという。
それもそのはずで、このサインはヤプールが仕掛けた罠だった。ヤプールはウルトラ兄弟をゴルゴダ星に集めた上で、東京をバラバに襲わせる。泡を食って地球に戻ろうとするウルトラマンAだったが、ウルトラ一族が苦手とする冷気を浴びせられて、急激にエネルギーを消耗してしまう。
このときの、初代ウルトラマンとウルトラマンAの会話はこうだ。

「お前に兄さんたちのエネルギーを分けてやろう」(初代マン)
「いやいけない。そんなことをしたら、兄さんたちが死んでしまう」(A)
「A、お前の使命は地球を守ることだ。行くんだ、A」(初代)
「いやです」(A)
※ここで初代ウルトラマンがウルトラマンAをぶん殴る。
「聞くんだ、A。このままではウルトラ兄弟はここで死ぬ。だがA。お前は死ぬには余りにも若過ぎる。生きるんだA。兄さんたちのぶんまで活躍できるのは、お前だけなのだ」(初代)

こうしてウルトラマンAは兄たちに説得され、そのエネルギーをもらって地球に戻り、超獣バラバと戦う。しかしその途中でヤプールは、エネルギーを失ってゴルゴダ星で磔にされている4兄弟たちの映像を空中に投影する。そしてバラバの邪魔をしたら4兄弟を殺す、と脅迫する。結局ウルトラマンAは戦いを躊躇してしまい、バラバに敗れ去る・・・。


ウルトラマンAが地球と人間に対して、兄たちのような自然な母性を持っていなかったことは明らかだ。ウルトラマンAにとって地球は、彼の「正義」を発揮するための戦場でしかないんだから当然だった。ウルトラマンAが地球を守る動機は、それが彼の「使命」だったからに過ぎない、というわけだ。

その結果、ウルトラマンAは地球と兄弟を天秤にかけたとき、迷うことなく兄弟を選んだ。
当時幼稚園児だったぼくは、この後のウルトラ兄弟の磔シーンより、このときのウルトラマンAの選択にショックを受けたような記憶がある(神童だったもんで)。本当にウルトラマンAは「正義」なのか、友達の神童連中と熱く語り合ったような思い出がある。

が、冴えない中年になった今は、大声で断言できる。
ウルトラマンAは紛れもない「正義」だと。
それはウルトラマンAが、ヤプールという「絶対悪」と戦ったからだ。「悪」と戦う者は「正義」に決まっているのだ。

というわけで、この件についてはいずれ延々と長話をする予定だが、今はこの辺で置いておきたい。

それよりも今は、『ウルトラマンA』が迷い込んだ茨の城、「戦後民主主義」との関わりを先に検討するべきだろう。それは、上記「死刑!ウルトラ5兄弟」の後編、第14話「銀河に散った5つの星」の劇中に、TAC隊長、竜五郎の言動として現れる。

つづく

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